生涯の中で一番大事な 1年の発達をかなえる 骨盤体操“骨育(こついく)”
●骨育とは
●姿勢の成長
●赤ちゃんの脳の進化
●体軸と知的活動
●初期のコミュニケーションの発達
ママと一緒に赤ちゃんからの骨育体操
生まれた時は股関節が未発達で 股関節の成長とともに 背骨の柔軟性が作られます。 股関節と背骨、この二つが発育することで 立って歩けるようになりますが、未熟なまま成長すると 骨盤や骨格の歪みを起こして背骨のカーブが側弯し、 姿勢が崩れてしまいからだの動きに左右差が出来てしまいます。
体の左右差は関節に負 担がかかり、柔軟性が欠 け、動きの悪いからだに なっていきます。 からだの動きの悪さは 脳の前頭前野や脳幹の 発育にまで影響します。
※前頭前野:思考するところ
※脳幹:体温や呼吸を管理するところ
“人の身体機能の基は骨盤にある”という 運動理論を持つ「ピルビスワーク」は、 仙骨と後頭骨の連動運動を促し、背骨を柔軟に 動かしてからだの左右差を調整し、脳幹のはた らきを活発にする効果が期待できます。 このピルビスワークを新生児の発育に役立てる ため研究されたのが「骨育」プログラムです。
出産による骨盤のダメージ を修復する効果の高いピルビ スワークでママも骨盤の機能 を回復させ、育児の中に生か して母子ともに健康で優良な 心身を鍛えていきます。
骨育で期待できる効果
●均整の取れたプロポーション
●脳幹の発達及び前頭前野の発達
●情緒の安定
●運動能力の発達
●姿勢と呼吸の安定 など
日々の生活の中での経験と記憶こそが子どもの素質となる
0歳からの骨の育児がナゼ必要なのか
骨盤で背骨を垂直に保てる力がつくまでは 乳児の身体を縦方向にすることは害があります。
背骨は円筒形の骨が積み重なり、周りが靭帯・筋肉・軟 部組織で強化されています。 骨の発育と靭帯・筋肉・軟部組織の発育が協力して縦位置 でも頭の位置がブレない動きができるようになっていきます。
【背骨の発育は重い頭を支え、 脳と身体の神経伝達を活発にする ために重要】
乳児の背骨の強度を考えると、生後4か月ごろまでは受け止める 力は無いと予測されます。 縦抱っこの時には親の手の支えがあるので、一見頭を保持している ように見えるだけです。 縦方向への力をゼロにできる位置は 水平体のときだけ。 乳児を横に寝かせたときです。
少しでも身体を傾斜させたときは、体軸にも押しつぶす力が作用 します。乳児の負担を減らすには姿勢を水平にすることです。 しかし、育児を行う親の行動パターンの習慣、 合理性が優位に働く可能性が高いために、 乳児の早い時期からの背骨の周囲の筋肉や靭帯、 軟部組織の強化が必要になります。
このようなヒトの体の仕組みを理解し、 体の土台の成長が目覚ましい0歳の段階で、 発育発達の段階に応じて適した体の刺激を 与えていきます。 お子さんの身体と脳力の可能性を最大ま で引き出すことを目的とした、ご家庭で親 だからこそできる新しい育児方法です。
人間の脳の進化とアライメント
四つ足の哺乳類から二足直立のヒトへと進化 する過程でできた脊柱とアライメントの形状 「体軸」を学びます。
体軸は、足底が床を押すことで安定します。 足でまっすぐ床を押すと、押した分だけ床も押し返し てくる反作用の力が発生します。 骨盤は、足底が床を押して 床からの反作用する力が 膝を介して股関節に伝わり安定します。 仙骨・骨盤→腰椎→胸椎・肋骨→頚椎→頭蓋骨
自立歩行するまでの寝返り、おすわり、ハイハイ、 つかまり立ち、などで得られる体への刺激が、体軸の 発達、着地の安定につながり、低次脳機能(脳幹)を発 達させて、高脳次機能(大脳)の発達の基盤となります。
アライメント「姿勢」は背骨の形状と動きによ り成り立っています
●頚椎(首部分の背骨)⇒前弯
●胸椎(背中部分の背骨)⇒後弯
●腰椎(腰部分の背骨)⇒前弯
●仙椎+尾椎(お尻部分の背骨)⇒後弯
二重のS字カーブを描く背骨の理解を深め 常にイメージしながら姿勢を整えていきます。 このように波打つごとく背骨が描く二重のS字カーブは生ま れながらにヒトに備わる先天的なものではなく、 成長の過程で形成されていきます。 ↓ 胎児の段階での背骨は、 頭の付け根からお尻までC字にクルッと丸まっています。 頚椎から尾椎まで全体でひとつの大きな後弯を描いた状態
月齢ごとの姿勢
【新生児の姿勢】
全体でC字を描く胎児の背骨をイメージし てみましょう。 産道を通りぬける時に初めて頚椎が一時 的ながら反るそうで、そうして外界に出た後 からは、仰向けや抱っこといった体勢で首 が伸び反らされることで徐々に頚椎に前弯 が定着していきます。
生後0か月~2か月の首すわり前の赤ちゃんの背骨は C字型のため、このC字カーブを保ったまま、背中を丸 めるように抱っこすることが大切。
後弯している胸椎部分は胎児時代のもともとのC 字カーブが残ったものであり、もともとのカーブと いうことからこれを【一次弯曲】と呼びます。 それに対し後から段階的に獲得される頚椎と腰椎 の前弯を【二次弯曲】と呼びます。
重力の干渉を受けつつ成長する中でこの【二次弯 曲】がうまく作れるかどうかが二足直立時の姿勢の 良し悪しを決定します。 また【一次弯曲】たる後弯が消えてなくならず胸椎 に残るというところもやはり姿勢を考える上で大事 な要素になります。
【生後3~4か月の姿勢】
生後3,4ヶ月頃には仰向けにし ても頭が後ろに落ちない「首が据 わった」状態となり頚椎の前弯が 安定します。 その後ハイハイやつかまり立ち を通してだんだんと腰椎にも前弯 の傾向がでてきます。
【生後7か月の姿勢】
生後7ヵ月頃、ずり這い期の乳児。 頸椎に続き、腰椎にも前弯ができ ます。
【生後9か月の姿勢】
生後9ヵ月頃 つかまり立ち期の乳児。 より不安定な立位を繰り返すうちに、腰椎の前弯が安定していきます。
アライメントの歪みの影響
また、乳児期に 左右どちらかに偏った動きや姿勢を 作らない習慣づくりも 乳児の骨育として大切です。
人体を後ろから確認した時に 背骨が左右に湾曲していたり 肩甲骨の位置が平行でなかったり 腰骨の高さが違ったりすることで アライメントの歪みと見なします。
【留意すべき発達不全】
●片側にしか寝返りをしない
●ハイハイをしないままつかまり立ちをする
●お座りが上手に出来ない など
乳児期には問題がなくても、幼児期から側湾などの 歪みが影響した筋力や血流の低下から起こる腰痛や肩 凝りなどの症状、運動能力及び学力や気力の低下や自 閉症発症のリスクまで影響する場合もあります。
アライメントの形成と 歪みのない体は 乳児の発育発達のときが重要です
赤ちゃんの脳の進化
赤ちゃんの脳については、世界中で多くの研究者 が今もなお研究を続けており、それにより様々なこ とが明らかになってきました。 ここでは、赤ちゃんの脳の発達について抜粋して 紹介していきます。赤ちゃんを育てる大人が知って いて子育てするのと知らずに子育てするのは将来大 きな差が出ることでしょう。
【ミズーリ州セントルイス,ワシントン大学の 神経生物学者ジェイソン・ヒル氏の研究成果】
●12人の幼児の脳と12人の若者の脳をMRI画像で比較 すると、ヒトの脳は成長するにつれて“驚くほど不均一 に”大きくなる。
●言語や推論など高度な認知・遂行プロセスに関与する 脳の領域は、視覚や聴覚といった五感に関わる領域の 約2倍の大きさに成長する。
【ミズーリ州セントルイス,ワシントン大学の 神経生物学者ジェイソン・ヒル氏の研究成果】
今回撮影したヒトの脳の画像を「サルの脳」の画 像と比較し、その結果、新生児の脳が成長して大 きくなっていくパターンは、ヒトとサルが共通の 祖先から枝分れした約2500万年前以降に生じたヒ トの脳の変化と「極めてよく似ている」とも発表 しています。
このことから・・・ 高度な認知や行動をつかさどる ヒトの脳の領域が遅れて発達するのは、 その領域が 生後の経験によって形成されるため と推測できます。
さらに、高度な能力に関わる領域の発達を遅らせる ことは胎児の脳が大きくなりすぎてお母さんの骨盤 を通れなくなるのを防いでいるとも推測。 生まれてから、自分のお母さんを見て認識する能力 など、生存環境に適した能力を成長させる 方が、進化の面で有利だったのではない かとされています。
新生児の脳はすでに大人のように構造化されている
実は、赤ちゃんの脳は多くのし わをもった形状といい、内部の ネットワーク構造といい、大人の 脳と変わりない程に完成していま す。
新生児の脳で不足しているのは シナプス形成 ※シナプスとは、脳の神経細胞と 神経細胞を結びつける接続部位の こと。
シナプスの数を数えた研究では、新生児の時期から生後1~8 カ月にかけて急激に増え、その後、また減っていくことが分 かっています。
赤ちゃんの脳でシナプス形成 が誕生後に爆発的に起きてい る時期は、実は新生児が新し い環境、つまり生まれたこの 世界で様々な能力を獲得して いく時期でもあることを表し ています。
シナプスが急激に増えるのは生後1カ月から8カ月 ぐらいまで。さまざまな基本的な知覚・運動機能が 次々と発達していく時期です。 行動では半年から1年ほどかけて、 首すわり→お座り→ハイハイ→立つ→歩く動作 が起こります。
言葉は1年を超えたころからあらわれ始めます。最 初の1年の間にも知覚と理解の側面において、ずっ と進行しており、それが表出してくるのがだいたい 1歳ぐらいからになります。その他の様々な能力も、 最初の1年に次々に出てくる事実は、発達心理学や、 行動研究者によって次々と明らかにされています。
この生後の脳の変化のキーポイント ある程度シナプスが形成されて ネットワークができること
脳は何もしていないときでも活動を しています。 特に赤ちゃんは1日の大半は眠って過 ごしていますが、ぼーっとしていて も、眠っていても、脳の各場所は活 動をやめることなく常に活動をして います。
赤ちゃんはよく眠りますが 眠っている時は、脳も休んで いるのではなく、夢を見たり、 ムニャムニャ言ったり・・・ シナプスが急速に発達してい る時期でもあり、脳の活動が 完全に止まってことはありま せん。
体軸と知的活動
体軸を整えながら 粗大運動と微細運動で 全身の筋肉と感覚を刺激して 脳の神経細胞を発達させている3~4か月児
運動発達の基本は体軸 体軸はさまざまな運動や活動を支えると 共に、世界を捉える軸となります。
3か月児からの体の発達の重要性
乳児は3ヶ月頃になると、頭を持ち上げる事で重力 と逆の方向が「上」だと学習しますが、これは、生 涯に渡り重力にさらされている私たちが地球上で生 きて行くために最も重要な学びです。
生後1か月ごろ、仰向けの姿勢 にすると、左右どちらか一方に 顔を向け、向いた側の腕・脚が 伸び、反対側の腕・脚が曲がっ た姿勢がよく見られます。
生後3か月を過ぎると、この反 射が統合されて、顔を正面に向 けて保てるようになります。 肘の位置は下がり、手や足がか らだの正面で合わせられるよう になります。
「ものを捉えよう」とする好奇 心の高まりが原動力となり、 体の真ん中で体軸を保ち手と足 の「左右の出会い」が起こります。
乳児は視覚や聴覚をとおして空間感覚を学習していく
2~3か月の時期はうつぶせの練習が大事です。 うつぶせを完成する目的は体幹に力をつけて体 軸をほぼ完成させる事です。体幹の力は、歩き 始めの脚の力に影響します。 1~2か月の乳児は、仰向けでは肩を上に引き 上げて、屈曲と内転の動きの中で、全身を使っ て母乳を吸い上げることで、重力に抗する筋力 を発達させています。
2か月を経過したころから、少しず つ、腕や脚を伸ばす(伸展)広げる (外転)運動が出来るようになったら、 うつぶせの姿勢の練習を行います。 うつぶせの姿勢で大事なのは、背骨 から肩甲骨を介して腕に力の伝達が感 じられるようにすること、さらに腕を 前方に出して、肘で床を押しながら胸 や腹筋の遠心性の筋緊張と連結して頭 を持ち上げることです。
肩が上がったままでは腕に力が伝わりにくく、腕で体 が支えられないので、胸の筋肉が育ち辛く、腹筋の働 きも不十分になるために、その後、長い期間ずり這い をしてなかなか手や膝で力強く床を押してハイハイで 前進することが出来ないこともあります。
【生後3か月のうつぶせ姿勢】
①肩が引き下げられている
②胸で体をさせられている
③首は伸びている
④あごを引いている
【発達に問題がある乳児のうつぶせ姿勢】
①肩が上がっている
②胸で体が支えられない
③首が後方に曲がり
④あごが上がっている
首・肩・胸・背中の筋肉を対象的に使うことが出来な いと、頭から骨盤までの体軸をしっかり保てず、首す わりが遅くなることがあります。 このような場合は、ママが仰向けやうつぶせ姿勢での 遊びを積極的に行います。
【運動発達を促す遊び その1】
からだの正面でおもちゃを見せて、 手に持たせたり口に触れさせてあ げます。
【運動発達を促す遊び その2】
ママの胸の上にうつぶせにして 肘で支えられるように手伝って あげます。顔を上げ、ママと顔 を見合わせて喜ぶ赤ちゃんが多 いです。
【運動発達を促す遊び その3】
赤ちゃんの胸と骨盤を支え ゆっくりと動かしてあげます。
乳児は言葉では無く、体と感覚で中心と上、前、横を 学び空間を感じる基礎を作っています。 頭を持ち上げる方向 →上 目で見えている方向 →前 音が聴こえて来る方向→横
月齢が進むにつれて体軸が整い「支持面」から外側に ある頭や手足は少しずつ自由に動かせるようになって いきます。
乳児は体を動かすと、動いた感覚を刺激として脳にフィー ドバックしています。 手を動かす→手の形が変わる→視覚で捉える→脳に伝わる 何かを触る→指とモノが触れた感覚→脳に伝わる 指を口に入れる→口の中の感覚と指の感触→脳に伝
3ヶ月から6ヶ月の乳児期は自分の体を自分で刺激し てその感覚を味わいながら確認する遊びが盛んに行 われます。 自分の体を使って遊びながら自分の体に関する知識 を蓄えている臨界期です
顔の正面から話しかけたり、おもちゃを置いてあげたり、 手だけで上肢を支える手押し車やママの太ももの上でうつ ぶせにしてあげるなどを遊びの中に取り入れ、様々な姿勢 を通して体へ刺激を与えます。